翻訳のご依頼をいただいた後はしつこくない程度にいろいろ聞くことがあります。場合によってはしつこいかもしれません。
参考資料の支給は重要
まずチラシやパンフレットなどデザインに落とし込む予定の翻訳に関しては、翻訳原稿(テキスト)のみならず、デザインファイルもいただく必要があります。動画のテロップなどに関しては動画そのものの支給があったほうがベターです。
というのはテキスト原稿だけが情報源だと使用場面や前後の文脈が把握しきれず、場合によっては雲とをつかむような感覚に陥り、正確に訳出できないことがあるからです。
たとえば、印刷会社のお客様が観光リーフレットの英語版を制作しており、その翻訳用テキストだけをEXCELで支給してくれたとします。このような形だと翻訳するとき、内容によってはかなり迷います。
たとえば「おかげさまで5年連続日本一!」という文の場合、日本一になったのはお店とかの売上なのか、人気度なのか、来客数なのか、はたままお店ではなく温泉やホテル等の人気度なのか、確認しないとわかりませんし、わからないと適切な翻訳ができません。なぜなら英語では人気一になったもの・ことによっては表現が変わるからです。
ですからテキスト原稿といっしょに必ず翻訳が使われる場面に付随する情報、例えばリーフレットであったり、動画であったりをいっしょにご支給いただいた方がスムーズになりますし、ご支給いただいていない場合はこちらからご依頼することになります。
人名の読み方や綴りの確認
まず確認するのは人名の読み方です。中国語ですが漢字の置き換えだけで済むので、読み方の確認は不要ですが、それ以外の言語の場合こちらで調べるのに限界がありますので、お客様に確認してもらうことになります。有名な人であればネットで検索すればわかることが多いですが、そうでない場合は、ふりがな、外国人の場合はスペルの綴りを聞くことになります。
ただ、一部歴史上の人物で漢字しか伝わってきておらず、博物館の学芸員すら読み方がわからないケースもあります。そのような場合はお客様と相談の下、もっとも近いだろう読み方を当てることになります。
社内用語の確認
もう1つ確認することは社内用語です。実際にあったことですが、機械関係の翻訳をしていて、「再コン」という用語が出てきました。ネットをどれだけ調べても望ましい結果が出てこず、お客様に確認したところ、「再コンタクト」の省略だったことがわかりました。確認せずに翻訳者にそのまま流していたらおそらく翻訳者が戸惑うと思いますし、適当な翻訳にあてるかもしれません。
このようなことを未然に防ぐために、原稿の通読と社内用語の事前確認をしております。ただ、大型プロジェクトの場合は事前に通読する時間がないことがほとんどのため、進行中の都度確認という形になります。
原文改変可否の確認
原文の構成が翻訳に向いていない時は翻訳しやすいように修正してもいいか確認することもあります。例えば次のような当て字を利用した文があるとします。なおこれは弊社が考案した文で実際にあった文ではありません。
このトレーニング用のこぎにくいバイクは発明にたいへんな苦労が伴っており、それは発明者が考案した「倍苦」という当て字にもよく反映されています。
この文を英語に翻訳するとき、「倍苦」の翻訳に長大な説明文が必要となり、前後の文脈によっては「このトレーニング用のこぎにくいバイクは発明にたいへんな苦労が伴っております」とし、当て字の部分を翻訳しなくてもよいことがあります。
もちろん翻訳するしないはこちらのみで判断できないので、お客様の判断を仰ぐことになります。
このように、文章の原意を変えずに、翻訳しづらい表現を翻訳しやすく改変してもよいかについて確認することもあります。
確認しないで原文を修正することも
それ以外にも、たとえば料理のメニューで「木の子」というような普段見慣れない形をとる単語がある場合は、翻訳したら同じになりますので翻訳者がわかりやすいように「キノコ」とこちらで自主的に書き換えることもあります。
また例えばラストオーダーを「L.O.」として略すことが多いと思いますが、これを「ラストオーダー」に直してあげると翻訳者もやりやすいかもしれません。
いかがだったでしょうか。翻訳の準備段階にもいろいろやらなくてはいけないことがあり、また別の記事に詳述したいと思います。