翻訳を依頼するとき、最終成果物が印刷物の場合には、予算が許す限り、外国語のDTP(デスクトップパブリッシング)組版も一緒に依頼した方がメリットが大きいです。
その理由は3つあります。
理由1:高品質な仕上がりになる
外国語の組版ルールに従う
単語の途中で改行している日本語のキャッチコピーや、1文字ではなく2文字字下げしている日本語の文章や、伸ばし棒が行の先頭に来ている日本語のテキストを想像してみてください。
きっと、不自然さを感じるではないでょうか。
どれも細かいことばかりですが、印刷物の仕上がりレベルを大きく左右する要素です。そして、外国語DTPのノウハウがないと、これらを正確に行うことは困難です。
一方、翻訳とともにDTP組版も注文した場合、外国語DTPの知識を持っている編集者がDTP組版を担当するので、改行、字下げ、禁則処理などは対象言語のルールに従って行われます。細部への配慮が行き届くことで、全体の見栄えが大きく向上します。
デザインの美しさをキープ
外国語版に変換する日本語版のデザインデータは、書体を含めて完成されたデザインです。
外国語版に置き換える時に、例えば全部明朝体にするとか、テキストの色を変えて強調している部分を全部同じ色にするなど、無造作にフォントを適用すると、せっかくのデザインが損なわれるかもしれません。
その点について、外国語DTP組版に対応可能な翻訳会社は様々な外国語のフォントを揃えており、外国語の知識も持っているので、日本語版と同じスタイル、同じサイズのフォントを適用するなど、適切なフォント選びをすることによって、デザインの美しさをキープした外国語版に仕上げることができます。
理由2:より適切な翻訳にアレンジできる
DTP組版を翻訳と一緒に依頼すると、デザイン画面上の情報に応じて、翻訳を臨機応変にアレンジしてもらうできます。
例えば、DTP組版のとき、ここはタイトルだから単語の頭文字を大文字にするべきだとか、画像の横に配置されるテキストだから、主語を省略してもよく、むしろそうすることで情報の重複を防ぐと同時にスペースの節約にもなるといった、デザインに落として初めて気づく修正すべき点があります。そしてこれらの細かい調整をしてもらうことにより、質の高い文章と美しいデザインを得ることができます。
特にスペースが限られている場合は、表現を少し変えることで綺麗にスペースに収まることが多いです。翻訳会社からもらった訳文をそのまま適用し、無理やり長体をかけてスペースにねじ込むよりは、ビジュアルを損なわないずっとスマートな対応といえます。
理由3:手間の軽減と安心感
DTP組版を翻訳と一緒に依頼すると、自社で行う作業は最終確認だけになりますので、手間がぐっと減ります。これにより、他の重要な業務に時間を割くことができますし、なによりプロに任せることで仕上がりの品質も安心です。
特にボリュームの大きい案件や、複数の外国語対応が必要な案件の場合、多くの専門的なリソースを必要とするため自社でのDTP組版作業は非常に時間と労力がかかることが予想されます。
一方、DTP組版を翻訳といっしょに翻訳会社に依頼すれば、その分の労力を削減し、効率よく案件を進めることができるようになります。
もちろん、いいことばかりではありません。翻訳とともにDTP組版を依頼することにはデメリットもあります。
デメリット1:コストが掛かる
DTP組版まで依頼すると、DTP作業の料金が追加されるため、翻訳だけを依頼するよりも料金が高くなることは避けられません。
しかし、これも考え方次第では異なる結論が出るかもしれません。
自社でDTP作業を行う場合、その分労働時間がかかります。外注する場合はその分の労働時間を節約できますので、必ずしも高くつくとは限りません。まして外国語の知識を持ったプロに任せることによって安心感も得られますし、自社スタッフが他の重要な業務に集中できます。
また、翻訳とDTP組版をセットで依頼する場合、割引が適用されることがあります。例えば、弊社では両方依頼していただくと、翻訳の単価を抑えたり、特別割引をしたりするなど、ボリュームに応じて価格を調整しています。依頼の際には、こうした割引があるかどうか確認してみると良いでしょう。
コストは確かに重要な要素ですが、仕上がりの品質や効率性を考えると、DTP組版込みで依頼する価値は十分にあります。
デメリット2:自由度の減少
DTP組版を外注した場合、ちょっとした修正が必要な時でも、その都度依頼しなおさなければならず、少し不便に感じることがあるかもしれません。
確かに翻訳関連の修正はプロに任せたほうが安心ですが、例えば数字を修正するだけといった場合は、自社で手っ取り早く対応したいものです。自社でできるのに、編集可能なファイルを持っていないがために、修正依頼と納品の往復に余計が時間がかかってしまいます。これでは、むしろ手間が増えてしまったと感じるかもしれません。
そういうことで悩む場合は、編集可能なデザインデータ(例えばアウトライン前のAIファイル)を納品してもらうといいでしょう。編集可能なデータの提供に消極的な業者ももしかしたらいるかもしれませんが、弊社ではお客様の利便性を第一に考え、喜んで提供しています。
まとめ
外国語のDTP組版を翻訳といっしょにプロの業者に依頼することに、デメリットを上回るほど多くのメリットがあります。
前述のように、制作側は高品質な仕上がりに、プロに任せることで得られる安心感と手軽さなどのメリットを享受できます。
しかし、メリットを享受できるのは何も制作側だけではありません。
印刷物を実際に手に取って使うのは例えば外国人観光客などのエンドユーザーですが、エンドユーザーにしても、よく自分の言語にローカライズされた親しみやすく使いやすい読み物を手にできるので、日本での滞在がより充実したものになるでしょう。
また印刷物の制作を依頼する情報提供側にとっても、予算を出して作ったものがより実用的なものになる、エンドユーザーが印刷物を読んで行動を起こしてくれるといったメリットを得ることができます。
この記事が外国語DTP組版を翻訳といっしょに発注するかどうかを考える際の参考になればと思います。お持ちのリソースと目指す目標を見極め、賢明な判断をしてください。